ノベルADVと「世界」

amphibianです
そろそろQ&Aをやろうかと思いましたが 時宜におうじて別の話題です


~今日あった雑談~


nabe: GDCのナラティブ賞に、ノベルゲーが選出されたという面白い話題が ※リンク先は英語です


※GDC……Game Developers Conference 要はゲーム開発者の祭典
※ナラティブ賞……「ナラティブ」の概念はこういうのらしい 要はテキストの外で語られる物語的体験ってことかな GDCのナラティブ賞がこれなのかは知らん オナラとは関係ない

nabe: ゲームレビューはこっち ※オトナ向け内容がふくまれます
nabe: 海外のADV市場の話としてなかなか面白いかと
nabe: いろんな話題が出てますね アジア圏の日本ぽい絵が描けて英語できる人たちがシェアかっさらうかもよ、とか
amph: 確かに面白そうな状況ね
nabe: 同じくGDCで428の海外展開の話も出てて、
nabe: ちょっと熱いですね
amph: ……という話をしたということを今日のポータル更新のネタにするか
nabe: いいと思います(笑) 海外意欲はあるんですよ的な


~以下、思ったこと~


1.世界が日本に追いつく?

うちでは「ノベルアドベンチャーゲーム」と呼んでいますが 基本的にこのジャンルは世界的には「ビジュアルノベル (visual novel)」と呼ばれます
「サウンドノベル」という呼び名もありますね
どっちも商標とられてるのでつかえないんですよね
うちもとるか ノベルアドベンチャーの商標

それはともかく 「ビジュアルノベル」は欧米ではながらく ごく限定的なオタク向けコンテンツであり 一般的には好まれないジャンルであると 認識されていたように思います
日本においては 18禁美少女ゲームというジャンルの強烈な需要と訴求力が業界を牽引し ある意味でより自由で過激な表現が許されるフィールドにおいて 一般エンターテインメントとしても引けを取らない物語が多数生み出されるに至りました
一方で「弟切草」に端を発するチュンソフト様のサウンドノベルシリーズも命脈をつなぎ 「428」は大きなヒットになりました
このへんのルーツやらなにやらは 専門外なので ゲームライターのかたにお任せするとして
これらは基本的に国内でのみ遊ばれたものであって 海外ではゲーム性のない物語だけのゲームは好まれない と いわれてきましたね

そんなことは ないはずなんですね

ビジュアルノベルは ゲームというより 物語体験をさせるエンターテインメントの表現手法のひとつと考えるべきものです
たしかに(システム面では)ゲーム的要素は ありません
しかし 「絵」と「音」と「文」を組み合わせたものであって インタラクティブな操作ができ 地の文による高度な表現も可能であるという点で 小説 絵本 マンガ アニメ(映画)のどれとも違うものです
よく揶揄される「紙芝居」には確かに近いですが それよりももちろん大量の情報を詰め込みストレスなく楽しむことができる 非常に強力なツールだとおもいます

画像・映像中心のマンガやアニメ・映画と比較してのつよみは ひとつは「地の文」 ひとつは「やろうと思えばそいつらの強みも使えること」でしょう
ウチのは結構ウザがられてる気配もしますが 地の文による説明や描写は ときに映像を出すよりも抒情豊かで印象的で説得力がある情報伝達を行うことができます しかも大体絵より割安です
マンガと小説の中間的に 絵によって適度に情報を補うこともできますし ときに絵が支配的に ときに文が支配的にすることで緩急をつけることもできます
いまどきボイスやムービーだってだしほうだい
そう考えれば ビジュアルノベルは 最強のエンターテインメントエンジンにだってなりうると思いませんか?

明らかに 「海外では~」という侮りには ポテンシャルへの過小評価があったとおもいます
いずれ海外でもこの手法が採用されはじめるだろうことは想像にかたくなかったし
なんならだいぶ前から 兆候じたいはいくらでもあったとおもいます
かたわ少女しかり Steamでのネコぱら旋風しかり……
すでにSteamでは数多くのVisual novelを見つけることができますし 「ひぐらし」などのユニバーサル版も 安く手に入る状況が どんどん広がっています
きっとそのうち 完全海外産の数メガテキストの対策ノベルゲームが 日本市場を直撃するんだろうなーと 当然のきけつとしておもいます
日本文化がうんぬんとかじゃなくて 面白くて長い話が出ればいいって話ですからね
(もちろん 日本発祥のなにかが世界に認められるってことは 日本人としては誇らしいんですけどね)

そんなときに ついにエロゲーが そーゆー場でもない場所で賞を受賞!

エロはともかく この作品については 非常に興味深い作品なので
ゲームとして面白くて革新的で良かったと 評価されたことを願うことにします

2.恐怖と不安

案の定「いつか日本は追い抜かれるぞ~」とか「ごっそり海外勢にとって食われるぞ~」とか 話が出始めています

これまでアニメ等で似たようなこと言われてるのいっぱい見ましたし 課題をもってる業界なのは確かだとおもうので 強く警鐘をならす声があがるのは当然とおもってましたが

いざ自分たちの領域でそれがおきると すごい恐怖と不安ですね

国産ノベルゲーは海外産の絨毯爆撃くらって死ぬのでしょうか

そんなわけなくないですか

  • ネイティブ言語が異なれば表現も異なってくるはず 海外産は海外産で魅力だったとして 国内産のものとは違う魅力になるとおもう
  • JRPGつくりまくる会社にいておもいますが 特定のスタイルの作品を求める需要は常に世界のどこかにはあるので くいっぱぐれることはないだろう むしろジャンルが広がれば客がふえるんじゃないかな
  • 増えたところでどーせノベルゲー業者なんてマイナージャンルのままだとおもうので 世界中の同業他社と「肩身狭いね」「Yes」と言い合う日がくるだけだろう
    • なぜマイナーのままかというと 結局ノベル=「読む」エンターテインメントには読み手側に一定のリテラシーが必要になるため 映像や音声だけですべてを伝えられるメディアと比較すればパイはちいさくなるとおもってるからです

でも理屈はどうあれ不安にはなる……

くそー

 

3.結局はがんばるしかない

作り手としてもっとも説得力と影響力をもてる活動は けっきょく
面白いものを作りつづけて 自分の価値を証明しつづけること これに尽きるのでしょう
つねに新しいひとは出てきて いまの自分に与えられている評価や栄誉や食い扶持をおびやかすかもしれない
その恐怖とたたかいながら やるしかないのでしょう 相手がちょっとふえただけなのでしょう

そもそも自分は新しさや巧みさという点であまり有能な書き手ではないとおもっているので
やる気と攻撃性とお茶目さを失ったらまけでしょう

つぎはもっと うまくやりたい
そのおもいをもって これからもがんばろう

そんなことをおもった ニュースでした

とりあえずウチのADVを世界で売る手段は速めにととのえたいので 未来のパートナーさんからのご連絡お待ちしてます

 

4.ところで

amphibian作品では たまに「説教くさい概念」が指摘されることがあって
おそらくそこには amphibian個人の政治的主張が意識の内外でにじんでいるとおもいます
べつにamphibianがamphibian党をつくって社会活動をするためにやっているわけではないので 共感してもらわなくても構わないのですが 面白がってほしいとはおもう
また もし共感してもらって それが人生の糧としていただけたりしたら そりゃあもう光栄ですが
「後悔しなきゃ悪をやっていいとゲームにおそわった 今は反省している」とか やっちゃだめですからね
「一本筋が通った主張」と「現実でやっていいこと」は ちがうのです

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  1. 2020.01.17

    老成と保身
  1. Bi 2017.03.04 1:26pm

    絵の魅力と文の心理描写と音による演出を合わせ持つビジュアルノベルってポテンシャル凄まじいのでは?と前から思っていたので、
    とても納得できる考察ですっきりしました!
    もっともっと評価されて優れた作品がたくさん出てくるのを期待したいですね。
    日本においてはDSやPSP時代はADV結構出てましたが、今はかなり少ないですしね…。
    なのでケムコさんには今後も面白いADVを出し続けて欲しいです。期待しています。

  2. 匿名 2017.03.04 3:07am

    Spike-Chunは海外に強いとことADVの大家が合併しただけあって、海外展開が凄まじいですね。Zero Escapeのような海外で異様に人気があるADVを抱えているからこそできることなんでしょうが。
    ここはSteamに積極的にゲームを出していますが、もし海外展開する際はSteamでも発売してもらえると嬉しいです(個人的な願望)

    それにしてもGDCでビジュアルノベルが選出されるなんて時代は変わりましたね。全編英語のビジュアルノベルなのでハードルは高いですが、まあ英語は普通に読めるのでやってみようかな。

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